2012年03月22日

オーストラリア人っていい人なの?


朝食からホテルに戻ると、僕はさっそくインターネットで部屋探しに取りかかりました。
家賃の相場は、街の中心から数駅離れた場所でも、僕が考えていた予算の倍はするようでした。
それでも、食費と娯楽費の部分を削れば、なんとか3ヵ月は過ごせる範囲内でした。
贅沢な暮しをするつもりはありませんでしたが、この歳になって学生時代の時のようなギリギリの生活も嫌だなと思い、食費と娯楽費には少し余裕を持たせてあったのです。
僕はいくつかの物件の家主にメールを送りました。
朝食を摂ったカフェの店員さんがメールのひな型を考えてくれたので、僕はそれををそのまま使いました。

よし、これで後は家主からの返信を待って、部屋を見せてもらい、その部屋が気に入れば、明日にでも決まるだろう。

メールを送った達成感から、僕はすでに住む場所が決まったような気分になっていました。

僕はノート型パソコンを片づけると、スーツケースから水着を取りだしホテルを後にしました。
というのも、前日、市街を散策している際に、僕はホテルの近くに大きな屋内プール施設を見つけていたのです。
水泳は僕の唯一の趣味でした。
先月の終わりにスポーツジムの会員を解約するまでは毎日のように泳いでいました。
それ以来、もう2週間以上も泳いでいなかったので、僕は水の中に入りたくてうずうずしていたのでした。

その屋内プール施設にあったのは、50メートルのプールでした。
平日の昼間ということもあり、泳いでいる人はまばらで、ただでさえ大きなプールは余計に大きく見えました。
軽くストレッチをした後、僕はさっそくプールに飛び込みました。水温は低く保たれているようで、冷たく感じました。
僕はゆっくりと体をほぐすように往復し、水が自分の身体に馴染んでくるのを感じると、徐々にスピードを上げて泳ぎ始めました。
水の中は気持ちがいい。何も考えずにいられます。そこには、水と僕と、水が流れる音しかありません。自分が今オーストラリアにいることすら忘れてしまうくらいです。

自分が何往復したかわからなくなってしまった頃、僕はようやく泳ぐのを止めました。
入水した時にはあれほど冷たいと感じた水も、温まった身体には気持ちよく感じられました。
僕がプールの端で息を整えていると、隣のレーンでも僕と同じように肩で息をしているアジア人の青年の姿が目に入りました。
僕と同じくらいの年齢でしょうか。目が合ったので僕が小さく会釈をすると、彼はレーンを仕切っているブイに両腕をかけ、「君、泳ぐの上手だね」と息を切らせながら話しかけてきました。
僕は、そんなことないですよ、と笑顔を作って首を横に振りました。泳ぐのが好きなだけで、上手いわけではないのです。けれど、そう言われて悪い気はしません。
彼も泳げないわけではありませんでした。ただ、全身に余計な力が入ってしまっているために上手く身体を浮かせることが出来ずに、苦しそうに泳いでしまうタイプでした。
僕は、こんな風にもっとリラックスしてゆっくり泳ぐといいよ、と彼にアドバイスし、彼の前で10メートルほどゆっくりと泳いで見せました。
しかし、力の抜けきれない彼は、沈まないために手足をバタつかせ力ずくで浮こうとしてしまうのでした。
英語で上手く説明できなため、僕は彼の足首を持って「浮く」という感覚を知ってもらおうとしました。
そして、ようやく彼はその感覚をつかんだようでした。

僕等は一緒にプールをあとにしました。
泳ぎを教えたお礼にコーヒーを奢ってくれるというので、僕はそれに甘えてコーヒーをご馳走になりました。
僕が日本から来たばかりだということを知ると、彼はとても驚いていました。
シドニーに来た理由について尋ねられ、僕はワーキングホリデーで来たことや、滞在予定期間はおそらく3ヵ月くらいであることや、住むところを探していることなどを話しました。
僕も同じ質問を彼に尋ねました。彼の英語は流暢でしたが、ネイティブの英語とは違っていました。
そして僕は、彼がダニエルという英語名を持っていること、かつては台湾からの留学生だったけれど大学卒業後そのままシドニーに残ったこと、今週いっぱいは仕事が休みで暇を弄んでいることなどを知りました。

台湾人・・・。

僕は、自分が海外に出ようと思い始めたのは、以前勤めていた会社にいた台湾人社員の一言が発端だったことを思い出していました。
そのことをダニエルに伝えると、彼は笑っていました。
何かと台湾の人とは縁があるなぁ・・・。僕は、彼の笑うのを見ながらそう思っていました。

機会があったらまた水泳を教えて欲しいから、と彼が電話番号を交換しようと言い出しました。
しかし、僕は携帯電話をまだ用意していませんでした。
僕が、携帯電話を持っていないことを申し訳なさそうに伝えると、じゃあ、これから一緒に買いに行く?と彼が提案しました。
僕は、いい機会だと思いその案に賛成しました。

僕は彼に連れられ、街の中心部にある携帯電話を取り扱うお店に行きました。
数ヶ月の滞在なので、電話さえ出来ればよく、多機能な携帯電話は必要ありません。
僕は一番安いプリペイド携帯を選びました。
しかし、いざ支払いの段階になると、一つ問題が生じました。
僕は、自分の住む住所を示す身分証明を持っていなかったのです。
お店の人は、パスポートだけでは不十分だと言います。
仕方ありません、アパートに引っ越してからまた出直すしかありません。
既に何人かの家主には午前中にメールを送っていたので、僕は明日にでも住所が決まるだろうと考えていたのです。
僕は、その日の携帯電話の入手を諦めました。
すると、それまで僕の後ろにいたダニエルが、自分の運転免許証をお店の人に提示したのでした。

コレ使って。

は?僕は、とても驚きました。
僕は振り返り、ダニエルの顔をまじまじと見詰めました。

ふつう、どこの馬の骨ともわからない見も知らぬ奴に、それも外国から来たばかりの奴に自分の住所を使わせるか?

ダニエルは何食わぬ顔をしており、さっさと手続きを終わらせたいようでした。
僕は呆気にとられながらも、ただただ彼にお礼を言うだけでした。

こうして僕は携帯電話を入手することが出来たのでした。
ダニエルは何事もなかった様子で、僕が今買ったばかりの携帯電話を興味深そうにいじっています。
今朝のカフェの店員さんにしても、このダニエルという青年にしても、オーストラリアにいる人達って、みんなこんなんなのだろうか?
僕は不思議な気持ちで、彼の姿を凝視しているのでした。

この二日後に宿なしになって途方に暮れることになる僕は、これから先、幾度となくこの青年に助けらることになるとは、この時には思いもよらないことだったのでした。

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posted by ゆうすけ at 11:06| Comment(0) | TrackBack(0) | ワーキングホリデー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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