2012年05月11日

再就職


日本に帰国することはいつでも出来ます。けれど、一度帰国してしまとオーストラリアに再び戻って生活することはもうないと思われました。ならば時間の許す限りここに残って、日本にいては経験できないことを思う存分経験してみよう、僕はそう決心し、年が明けるとすぐさまそうすべく行動を開始したのでした。
ワーキングホリデーのビザの期限が切れるまで残すところ7ヵ月の時でした。

僕は就職活動を再開しました。
履歴書を新しく書き直し、それまでの誇大な表現を和らげ、新たにITヘルプデスクでの職歴を付け加えました。
年が明けたばかりの為か、求人サイトにはあまり多くの募集がありませんでした。僕はそのほとんどの求人募集に履歴書を送りました。
資金は来月には底をつきます。それまでになんとか仕事を得なければなりませんでした。

多分、2月にならないと、いい求人は出てこないと思うよ。

PCの画面とにらめっこをしている僕に、ダニエルがそう言います。
けれど、ワーキングホリデーのビザしか持たない僕に、職種を選んでいる余裕はありませんでした。
働かせてもらえるだけでも幸運なのです。
ほとんどの求人の募集には応募条件として「永住者」が挙げられていて、前回、就職活動をした時は、ワーキングホリデーと言っただけで電話を切られたことが何度もあったのです。

ただ、今回の就職活動は前回とは少し異なっていました。
僕にはITヘルプとしてオーストラリアで働いた経験があったのです。
履歴書を送った派遣会社からの電話には、多少の手応えを感じるものもありました。

ワーキングホリデーか・・・。でも経験はあるんですよね?
ちょっとクライアントに確認してみますね。

前回は確認すらしてもらえずに切られていた電話でしたが、今回の就職活動はいくらか僕に期待をさせる対応なのでした。
また、応募もしていない仕事を紹介してくれる派遣会社からの電話も受けるようになりました。
しかし、どの会社も長期で働ける人材を探しているようで、働く期間が限定されているワーキングホリデーのビザではやはり難しいようなのでした。

まあ、気長にやりなよ。仕事を得られるまで特別に家賃はタダにしてあげるから。

ダニエルはそう言って片目をつむり、僕の肩を軽くポンポンと叩きます。
本当にどこまでコイツはお人好しなんだろうか。僕は彼の好意を有り難く思うのものの、やはりそんな彼を呆れて見ずにはいられないのでした。
僕は正直、家賃をタダにして貰いたいと望んではいませんでした。また、家賃はしっかり支払い続ける気でいました。
ただえさえ安く住まわせて貰っている上、これ以上の迷惑は掛けたくありませんでしたし、やはり家賃を払うことによって自立した生活を送っていたかったのです。
無理矢理にでも家賃を受け取らせよう。僕はそう考えていたのでした。

しかし、その翌日に状況は一転します。
以前1ヵ月半だけ働いていた化学品メーカーの会社のマネージャーから僕は1通のメールを受け取ったのです。

もしよかったら、また1ヵ月半だけ働いてくれないか?

僕が辞める少し前に入ってきた、あの少し騒がしい日本人女性が1ヵ月ほど急に日本に帰らなくてはならなくなったそうで、その穴埋めをして欲しいとのことらしいのです。
また、僕なら安心と、その女性が僕を強く推薦してくれたらしいのでした。
僕は湧き上がる喜びを必死に抑えて、そのメールを何度も注意深く読み返しました。自分が間違ってその英語を理解していないかを何度も何度も確認したのです。
しかし、何度読み返しても、やはりそのメールは僕を再雇用したいという旨のメールなのです。

僕はその夜、仕事から帰って来たダニエルに何食わぬ顔をして家賃を支払いました。

えっ?いらないって言ったじゃん。いらないよこれ。馬鹿だな、仕事探しを優先しなよ。

少し不満そうにそう言うダニエルに、僕はにんまりと余裕の笑顔を見せつけてやりました。
最初、怪訝な顔をしていたダニエルですが、僕のちっとも動じない様子を見て、彼はようやく理解したようです。

マジで?仕事見つかったの?

僕とダニエルは一緒になって飛びあがり、喜びの悲鳴をあげました。そしてお互いの両手の平をパチンと高くに合わせるのでした。

僕はまた仕事を始めることになりました。
期間は短いとは言え、これでまた数ヶ月分の資金が調達できるのです。
求人が増える2月に少し余裕を持って次の仕事に向けての就職活動も出来るようになりました。
ビザが切れるまであと7ヵ月です。
派遣会社には多少手応えが出てきています。

どうにかなる。

さい先の良い新年のスタートは、僕に否応なしにそう思わせました。
その数ヵ月後、「どうにかなる」では済まされないほどの大転機が僕に訪れることになるとは、僕はその時、まだまだ知らずにいたのでした。


にほんブログ村 海外生活ブログ ワーホリへ
にほんブログ村
posted by ゆうすけ at 09:35| Comment(0) | TrackBack(0) | ワーキングホリデー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。