2012年05月28日

第二次面接の結果


第二次面接の結果は一週間のうちに出るはずもなく、面接の翌日から僕の生活はまたいつもの通りに戻ったのでした。つまり、何をするでもない生活が続いたのです。
オーストラリアに来てから出来た友人らは、当然、平日の日中は働いていましたし、あの水泳のインストラクターも、午前から語学学校に通い、午後はアルバイトで忙しくしていました。なので、僕は一人で暇な時間を潰さなければならなかったのでした。

少しやり過ぎてしまった感のあるあの第二次面接のことを、僕は反省していました。
面接中、僕は自分の用意した“台本”の台詞を読んでいただけでした。自分の言葉で話したのは最初と最後の挨拶くらいなものでした。
暗唱しているとバレないように十分気を付けていたので、面接官らには、僕はある程度英語の話せる日本人と映ったかも知れません。
しかし、それは僕であって本来の僕ではないのです。
僕は実力以上の自分を演じた後で、実力のない本来の自分を少し惨めに、そして恥ずかしく思っていたのでした。

暇な時間を僕はプールで泳いだり、公園やカフェで本を読んだりして過ごしました。
面接の結果は、もうどうでもいい。
僕は早く面接のことを忘れたいとすら思っていました。

その日も僕は、近所のカフェでコーヒーを飲みながら本を読んでいました。
ポッツポイントという地域にあるそのカフェは、週末ともなると空席を見ることがないほどの人気店なのですが、平日の昼間はとても静かで、僕は無職の特権を活かして、その店でダラダラと時間を過ごすのでした。
僕は店内を一望出来るいつもの“自分の席”に陣取り、本を読むのに疲れると人間観察を始め、また、それに飽きると本に目を戻すということを繰り返していました。

その日は、僕の他に3組の客が店内にいて、僕は彼らに気付かれないように一組ずつ観察してゆきました。
シドニーでも比較的お洒落な人達が集まるこの地域は、お洒落に敏感なゲイの人達が多く、その3組のうちの2組はゲイのカップルのようでした。
男臭くなり過ぎない程度に、男性のセクシーさをアピールする彼らの美意識にはいつも感心させられてしまいます。ゲイに限らず、この国では、可愛らしさよりも、決して嫌らしくはない大人の健康的なセクシーさが男女を問わずお洒落の要素に取り込まれていることが多いようです。

洗練された雰囲気を醸し出している2組のゲイカップルとは対照的に、その奥には先ほど来たばかりの少し野暮ったい格好をした中年の男性と女性が一緒に座っていました。
2人ともくたびれたスウェットパンツに、これまたくたびれたTシャツを身につけていました。ジョギングを終えたばかりなのでしょうか。2人の身体からは汗の臭いがしてきそうでした。その豊かな身体のサイズには窮屈と思われるTシャツを着ている男性は、静かな店内でガヤガヤと大きな声で話し出しました。
僕はそれを残念に思い、カバンの中にヘッドフォンを探しました。聞くに堪えられない喧しさです。
僕はカバンの中に手を突っ込みヘッドフォンのコードを手繰りました。すると、隣のテーブルにいたゲイのカップルの一人がぼそっと彼の連れに言ったのです。

ラッセルじゃない?

僕はカバンの中で動かしていた手を止めました。そして、もう一度、奥に座る中年男性に目を向けたのでした。
僕は自分の目を少し疑いましたが、その中年男性は、どうやらあの有名な映画俳優らしいのです。
スクリーンの中ではあんなに男らしくセクシーであるはずなのに、そこにいる彼にはその面影の微塵もありません。
僕は益々残念に思うのでした。

僕はヘッドフォンを耳に当て残りのコーヒーを一気に啜りました。
そして、僕は席を立ちました。
その時、映画俳優がこちらにちらりと目を向けたので、一瞬僕と目が合いました。
僕はどきりとしました。何故なら、映画に見るあの鋭い彼の目つきを、僕はその時見たような気がしたからです。
僕はそのまま逃げるようにして店の外に出ました。

家までの道、僕は彼の顔を思い出していました。
彼の映画の顔。彼のカフェの顔。
そして僕は思いついたのです。
そもそも英語は僕にとって台詞のようなものでした。
参考書にあったフレーズや誰かが言っていたフレーズを僕は繰り返し口にしているだけでした。その繰り返す回数が増えて、今ではすっかり僕の言葉のようになってしまっていますが、もともとは誰かが用意した台詞のようなものだったのです。
“ハロー”や“サンキュー”ですら最初は僕には何の意味も持たなかった単語だったのです。それを毎日言っていたら、そのうちに意味をもつようになり僕の言葉になったのです。
面接では、僕は慣れないフレーズを多用しましたが、それらだってこれから何度か使えばすぐに僕の言葉になるはずです。
何も反省することも恥ずかしがることもないではないですか。
映画俳優のあの鋭い目つきが、僕に気にすることはないと言っているように思われました。
今はまだ、スクリーンの中で台詞を言うように英語を話してしまっていますが、数をこなせばカフェでお喋りをするように自然と話せるようになる気がするのです。
僕は急に面接の結果が気になりました。

僕は今にも駆け出しそうにして家に戻りました。
家に着くとすぐにPCを立ち上げ、面接の結果がメールで届いていないか確認しました。
そして僕は1通のメールを見つけ、それを開いて愕然とするのでした。

第三次面接のお知らせ

僕は第二次面接をパスしたことを喜ぶことも出来ず、いつ終わるか見えてこないこの面接の多さに溜息をつかずにはいられないのでした。

そしていよいよ第三次面接(最終面接)が始まろうとするのでした。

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posted by ゆうすけ at 11:01| Comment(6) | TrackBack(0) | ワーキングホリデー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
思わず力がはいってしまいました、最終面接ガンバレゆうすけサン!
もったいない、サイン貰っとけば良かったのに...!
Posted by midmark at 2012年05月28日 11:19
> midmarkさん、
コメントありがとうございます。
ただのおっさんでしたよ(笑)。
時々ラシュカッターズベイの公園で運動しているそうです。
これからもよろしくお願いします。
Posted by ゆうすけ at 2012年05月28日 11:53
昔トムクルーズが二コールとまだ結婚していた頃、子供をつれてよくセンテニアルパークに来ていました。
トムはオーラがありましたよ〜〜。
Posted by olive at 2012年05月28日 12:22
> Oliveさん、
お久しぶりです。
コメントありがとうございます。
お〜、それは大物が引っかかりましたね(笑)。
シドニーではよく有名人が普通に歩いてたりしますよね。
また見かけたら報告しまーす。
これからもよろしくお願いします。
Posted by ゆうすけ at 2012年05月28日 13:04
お久しぶりぶり〜
ゆうすけ君、元気っすか!
相変わらず、なんとも小説のようで読み応えあるブログだね〜飾り気はゼロだけど(笑)
オーストラリアの風はゆうすけ君に合っているようだね〜うらやますぃ!!
永住目指して頑張って、そして起業して、いすれ僕を雇ってくだい!!
ツイッターやってるのね^^実は使い方あまりわからないのだけどフォローさせていただきます?!体に気をつけて頑張れ!
Posted by green at 2012年05月28日 14:41
> greenさん、
お久しぶりです。
コメントありがとうございます。
そうなんですよ、ツイッター始めてみました。僕も使い方よく分からないんですけどね。でもツイッターでは、greenさんお待ちかねの写真もいろいろ載せてます。
ツイッターでもお待ちしてますね。
Twitter: @Yusuke_Sydney
これからもよろしくお願いします。
Posted by ゆうすけ at 2012年05月28日 15:40
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